PENTAXレンズの光学性能は他メーカーと比較して、明らかに優れているというものは正直あまりない。
特にレンズ設計の自由度が高いミラーレス機が主流となってからはより難しい状況にあると言える。
しかし、その環境下にあってなお、圧倒的な個性によって綺羅星のような輝きを放つレンズがある。
それが、Limitedレンズだ。
今回はそんな奥深いLimitedレンズについて紹介しよう。
FA LimitedとDA Limited
まず、Limitedレンズについては大きく2種類に分けられる。
上の写真の左3本がFA Limited、右3本がDA Limitedだ。1番右のでっかい1本はDFA Limitedなんだけど、めんどいからFA Limited枠で。
かなりざっくり説明すると対応するイメージサークルが違う。
FA Limitedはフルサイズ、DA LimitedはAPS-C用のレンズとなる。FA LimitedはもちろんAPSカメラでも利用可、DA Limitedも一部のレンズはフルサイズでもケラレずに使用できる。
また、両シリーズどちらもsmcとHDのコーティング違いのバリエーションがある。
現行はHDコーティング製品で基本的にはそちらを選んだ方がいい。
なお、わたしはFA Limitedはsmc、DA LimitedはHD版しか持っていないので、それ前提にお話をする。あしからず。
あと、DA Limitedはわたしが保有している20-40mm、35mmMacro、40mmの他に15mm、21mm、70mmとあるよ。
FA Limited
唯一無二の質感描写
まずはFA Limitedの方からご紹介しよう。
FA LimitedはPENTAXを代表する銘玉中の銘玉。そして、それをたらしめているのが、圧倒的な質感描写だ。
描写力の高いレンズを「空気感まで写している」と表現することがよくあるが、FA Limitedにおいてはそれに加えて手触りまで伝わってきそう。
色表現に関しては全く忠実ではないし、smc版はフリンジや収差も普通に出るのだが、それが大海のチリに思えるほどの質感描写。
それはまるで「こんなふうに写ってほしい」という願望を具現化しているかのようだ。
それがより強く現れるのがLimitedレンズで撮影した、ソウルレッドのロードスター。
ただ単にコントラストが高いというのとは一線を画す、艶とエロス。
どうですか、このドキッとするような赤の表現。いや、赤よりも紅というべきでしょう。
美しい佇まい
Limitedレンズと言えば、オールドレンズのような渋くてかっこいい見た目がうり。
しかも、ただ古くさいデザインのオールドレンズも多い中、Limitedレンズはどことなく現代のM型ライカやVoigtlanderのデザインを感じさせるものがあって、ちょべりぐだ。
さらに翠色に輝く七宝焼きのフィンガーポイントが完璧なデザインに花を添える。
これはFA Limited、DFA Limitedの象徴でDA Limitedには付いていない。
所有する喜びとはこういうもののことを言うのだよ、と言わんばかり。
絶妙な焦点距離
FA Limitedの焦点距離は31mm、43mm、77mm。へそ曲がりと言うか、変態的と言うか、とにかく変わった焦点距離だ。しかし、使ってみるとあながちそうとも言えない。
FA Limitedと被る、代表的な焦点距離で言うと28mm、35mm、50mm,85mmのあたりか。
これは個人的な意見だが、これらはFA Limitedの焦点距離と比べると「ほんのちょっと広い」or「ほんのちょっと狭い」。
広角ならこんなもんだろう、と構えると28mmでは半歩近づく程度の修正が必要だったりする。それが31mmだとわりと自然に撮影できる。
顕著なのが43mmで50mmと比較すると遥かに自分の標準のイメージにフィットしている。
最近、40mmのレンズが増えてきたが、PENTAXに時代が追いついてきたのかもしれない。
基本的にはHDコーティングの現行品を。しかし、例外もある
FA Limitedも近年、HDコーティング化されてグレードアップした。
フリンジの軽減や円形絞りの採用、サポートのことを考えると基本的には現行品を購入するのがおすすめだ。
しかし、43mmに関してはちょっと例外。
今は珍しい偶数枚の絞り羽根を有するFA43mmは円形絞りでない方が光条がよりよく出る。
ただなぁ、smc FA43mmは一番最初のFA Limitedのため、まだ七宝焼きのフィンガーポイントがついていないのよ。でもHD版には付いているので、見た目はHD版の圧勝なんだよなぁ。
まぁHD版もsmc版も全部買えばまるっとごりっと解決よ。
DA Limited
素直で優しい描写
続いてDA Limited。
DA Limitedの描写はFA Limitedとは大きく異なり、柔らかで優しさを感じる描写。
そのため、ほのかや里びと言ったカスタムイメージと合う。
FA Limited=夏、秋
DA Limited=春、冬
みたいなイメージ。
色味もFA Limitedに比べるとずっと素直だ。
他メーカーと比べるとPENTAXカメラはそもそもコントラストがちょっと高いため、DA Limitedの方が使いやすいシーンも多い。
素敵な佇まい
もちろん、FA Limitedの系譜を感じられるデザインになっている。
HDコーティング登場間もない頃、その象徴として付与された赤いリングは好みが分かれるポイント。わたしは別に嫌いじゃないが、なくなったってことは不人気だったのかな。
七宝焼きのフィンガーポイントはないが、質感は申し分なく、触ってもひんやりしっとりしていて気持ちがいい。
安い
FA Limitedと比較するとべらぼうに安い。特に中古価格は凄まじく、2〜3万円で購入できてしまう。オール金属の高クオリティ、オシャンティで描写力も高いレンズが2〜3万円だよ?
カメラ高い、レンズ高いって騒ぐならPENTAX買ってくれよん!!
シルバーは在庫限りでディスコン
DA Limitedのシルバーは今、続々とディスコンになっている。
残っている製品もメーカー在庫がなくなったら、終売になるだろう。
シルバーがいい人はお早めにご検討を。
共通の魅力
四季のカスタムイメージ
FA、DA 両Limitedレンズで楽しめるが四季のカスタムイメージ。
春:春紅、夏:夏天、秋:九秋、冬:冬野
というPENTAXらしく、日本をイメージした粋なネーミングになっている。
分かりにくいとか言っちゃダメ。
基本的には飛び道具的なカスタムイメージだが、その分、おもちゃみたいに使えて楽しい。
四季のカスタムイメージは使えるレンズが限定されており、これがなかなか不評。
たしかに不便だけど、まぁおもちゃだしな。ゲームの初回購入特典みたいなもんだと割り切っている。
小さくて軽い
FA、DA Limited共に光学設計で無理をしていないため、筐体がとても小さく軽い。
カメラバッグに入れると恩恵を特に感じられる。
FA77mmや43mmなんかはちょっとした隙間があれば十分入る。小さいというのは非常に立派な性能だ。
それでいてあの描写。バケモノか。
まとめ
フルサイズの単焦点で初めて購入したのはFA 77mm Limitedだった。
季節は夏。ジメッとした風や虫の音まで伝わってきそうな描写にこんな世界があるのかと衝撃を受けた。
もし、あの衝撃がなかったら、わたしは今ほど写真にのめり込んでいなかったかもしれない。
ミラーレス機をお使いの方も、すっかり安くなったK-1ⅡとFA43mmを買って、たまに遊んでみるとかはどうだろう?
最強のメインカメラにはなりえないが、最高のおもちゃにはなると思う。