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PENTAX K-3 MarkⅢ

我が家でメインカメラとしてK-1Ⅱと双璧を成す、K-3 MarkⅢ。

 

購入からうん周年という形でこのカメラがどんなものか語ったこともあったが、ちゃんとしたレビュー記事はまだだった。

 

ちょこちょこと下書きをすること2週間。満を持すぎて図らずも予約したあの日からちょうど2年くらいという、このタイミングでの公開となった。

 

 

 

購入経緯

2019年9月。リコーイメージングAPS-Cのフラッグシップ機開発を発表した。

当時、K-S2を中心にしたサブシステムの更新を考えてはいたものの、詳細がまだ分からなかったので、別のカメラを候補に考えていた。

seiranstudio.jp

(候補に考えていたKPとEM-5Ⅱが今結局、手元にあるという恐怖)

 

潮目が変わったのはPENTAX STATEMENTの発表。

これに合わせてPENTAXは新型APS-C機の開発話をこれでもかと投下してきた。

www.ricoh-imaging.co.jp

これがわたしのハートど真ん中を射抜く。

撮影プロセスを大事にするというPENTAXの姿勢。そしてそれを体現するK-3Ⅲというカメラ。Romanticがとまらない。

要はまんまとメーカー戦略に引っかかり、気づけばゲームボーイ以来の強烈な物欲を掻き立てられていた。

 

数度に及ぶ発売延期にK-3Ⅲは幻と消えるのではないかという噂もたった。

そもそもPENTAXブランド自体、消滅するんじゃないかという話も出た。

気が狂いそうなほど毎日毎日、K-3Ⅲのことを考えTwitterでそれを呟き、そしてついに2021年3月末、発売発表。もちろん予約開始と同時に注文した。

K-3Ⅲ発売時、SNSで見られたPENTAX界隈のあのお祭り騒ぎ。本当に楽しかったな。

 

Very Good

APS-C最強のファインダー

K-3Ⅲ最大の武器は非常に優れた使用感だと思う。

使っていて抜群に楽しいカメラ。

中でもファインダーはその使用感を支えている重要な要素の1つだ。

 

開発陣がことさら強調していたファインダーは実際、APS-C一眼レフでは最も広い1.05の倍率を誇る。

試しに倍率0.95のKPと比較してみると、この通り、大きさは一目瞭然だ。

K-1Ⅱユーザーの多くが指摘していた透過液晶によるファインダーの色付きや暗さ(わたしが感じてなかったアレ)もK-3Ⅲでは解消されている(らしい)。

 

ファインダーを覗いた時の景色が胸を打つものであるかどうかは写真を撮るモチベーションに直結する。

その点、K-3Ⅲのソレは文句のつけようがなく、初めてフルサイズのファインダーを覗いた時の「肉眼よりきれいじゃん」という印象そのものだ。

 

K-3Ⅲのファインダーを通して見た大雪山系の透き通るような大自然はきっと生涯忘れないだろう。

 

高いホールド性

K-1Ⅱのエントリーでも書いたことだが、手が成人女性並の大きさしかないワタシにとってカメラが手に馴染むかどうかは死活問題だ。

本体が厚くなりがちなフラッグシップ機は特に。

 

実際、一部メーカーのカメラは全く手に合わない。

親指の付け根にカメラの角がめり込むように当たって強い違和感があり、それを避けると上部のボタンに親指が届かない、とかそんな始末だ。

某メーカーのフラッグシップ機。わたしの手が小さくて親指を背面に回すとサムグリップと干渉する。

K-3Ⅲはその点、グリップはオーダメイドのかのように手に馴染み、サムグリップも干渉しない。

おまけに比較的薄く、軽量なおかげでK-1Ⅱよりもホールド性は高い。

 

良好な操作性

毎度のことながら各種ダイヤル、ボタン配置の巧みさはPENTAXらしい。

新機能のS.fnボタン・ダイヤルは22種類の設定項目のうち5つを選ぶとボタンを押しながら設定可能というもの。

わたしはスマートファンクションダイヤルをISOに割り当てているだけだが、使いこなせばよりテンポよく撮影できるはず。

 

何よりありがたいのがK-3Ⅲでついに搭載された測距点レバー。

何も目新しいものではないが、K-1Ⅱまでは付いていなかった。フォーカスエリアの選択はもちろん、機能切替も楽になったし、撮影後のピント確認にも便利だ。

 

極上のシャッターフィール

K-3ⅢのシャッターはK-1Ⅱと同様のリーフスイッチ。

しかし、実際のシャッターフィールはK-1Ⅱに比べると音も感触も若干柔らかい感じがする。

 

これが本当に素晴らしい。

上記にあげたファインダーやホールド性、操作性と相まって撮影するまでの流れがとても滑らかで自然。

こんな抽象的な言葉でしか表現できないのが悔しいほど、このシャッターフィールはカメラとの一体感を味わわせてくれる。

 

APS-C一眼レフのフラッグシップとしては小型

APS-C一眼レフの傑作として名高いニコン D500。

後述でも触れるが、K-3Ⅲはスペック公表時からD500に比べて性能が若干しょぼいと言われていた。

 

しかし、これは的確ではない。その理由が本体サイズだ。

K-3Ⅲは固定液晶を採用してまでサイズを抑え、結果的にKPとさして変わらない大きさを実現している。

かたやD500はK-1Ⅱ並に大きい。

これはD500が悪いわけではなく、XQBカードも採用し、APS-C機として究極の性能を目指したのに対し、K-3Ⅲは全体のバランスを重視したんだと思っている。

 

結果としてK-3Ⅲは高性能且つハンドリングに優れ、楽しく撮影できるマシンとしてよくまとまっている。

 

かっこいい

K-3ⅢのデザインはK-1Ⅱからの流れを汲むものだが、K-3Ⅲの方がやや伸びやかなフォルムでよりデジタル一眼レフらしい見た目。

奇をてらっていない質実剛健さに加え、革やマグネシウム合金の装いも質感高く、保有する喜びを感じられるデザインだ。

 

高い剛性

K-1Ⅱと異なり、落としたりはしていないが、相変わらず頑丈そうな感じが生半可ではない。

固定液晶で可動部が減ったことで余計に剛性が担保されており、絶対壊れなさそうな雰囲気はK-1Ⅱ以上かもしれない。

防塵防滴、-10℃の耐寒性能もいつも通り。

 

Good

高いAF性能

開発中のインタビューでK-3Ⅲは動体撮影の面でも頑張った、みたいな発言があった。

この情報もK-3Ⅲ購入に大きく傾く要因だったが「頑張った」のあたまに本当は何てつくのかは少し気になった。

PENTAXとしては」なのか「他社メーカーと比べても」なのか。

 

結果は前者...笑

ミラーレス機とは比べるまでもなく、件のD500よりも劣っていた。

 

が、あくまでもそれは相対的な話。101点測距(中央25点クロス)は過去のPENTAX機と比較すると劇的な進化であり、動体を撮るのにも十分な性能だ。

レンズにもよるが実際、スピードも正確さも申し分ない。

PENTAX K-3 Mark III HD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR RE 300mm f/6.7 SS1/500 ISO200

そりゃSONYの魔法のような異次元AFではないが、そもそもアレが「必要」と感じられるほどの世界は撮影者の高いスキルと強靭な忍耐が前提にある。

わたしみたいにどっちもない人間にはK-3ⅢのAFさえ贅沢品だ。

 

連写性能

動体撮影を頑張った、と言っただけに連写も最高12コマ/秒と従来のPENTAX機から大幅にスピードアップ。これ自体は目が星になるくらいの感動。

ただし、バッファ処理が残念大賞で2〜3秒しか息が続かない。

 

限定的にしか動体撮影をしないわたし自身は2〜3秒も連写が続けば十分なのだが、動体の動きの経過を撮影したいという場合には短すぎるんだろうな。

 

星景撮影能力

アストロトレーサーはPENTAXの数少ない訴求ポイントだがK-3Ⅲではさらにパワーアップしている。

PENTAX K-3 Mark III HD PENTAX-D FA 150-450mm F4.5-5.6ED DC AW 450mm f/5.6 SS70 ISO1600

それがアストロトレーサー Type3だ。

アストロトレーサーは本来、GPSとボディ内手ブレ補正を応用して星を追尾するシステムだ。これだけでも結構凄いが、Type3はなんとGPSの利用も必要としない。

 

つまりGPSキャリブレーションなどの事前準備なしでいきなり低感度&望遠で星を追尾撮影できる。意味が分からん。

 

惜しむらくは設計との親和性。K-3Ⅲは前述のように固定液晶だ。

剛性の面では良くても星景撮影で固定液晶はやはり使いにくい。

リコーイメージングからすれば開発資金の関係からK-3Ⅲに何でも詰め込むしかないのだろうが、ハードの設計と中身がチグハグなのは否めない。

 

Not Good

背面液晶の情報量が多すぎる

K-3Ⅲからなぜか背面液晶の情報量が大幅に増えた。これがあんまり美しくない。

KPの背面液晶表示はフォントが古臭い感じもするが、これくらいで十分事足りる。なんならスッキリしていて分かりやすい。

K-3Ⅲは見づらいとは言わないが、煩雑で特に必要のない情報表示も多い。

十字キーの単写・レリーズの表示なんて、試作段階を思わせるものがある。

 

まとめ

繰り返しになるがK-3Ⅲの真価は使用感だと思っている。

手に馴染むホールド性、フルサイズ機に匹敵するクリアなファインダー、素晴らしいシャッターフィール、それらが「写真を撮る」というその瞬間を華々しく彩ってくれる。

そしてこの撮影体験は陳腐化することも色褪せることもない「カメラ」であるからこそ得られる遊びだ。

 

だからこそ、わたしはK-3Ⅲのようなカメラにこそ、この業界が存続していくためのヒントが凝縮されているような気がしてならない。